5月29日付けの朝日新聞の夕刊で、夏樹静子さんがエッセイを書いておられ、そのなかで『Wの悲劇』の映画化についてこう述べておられます。
『Wの悲劇』は84年に角川で映画になり、見に行きました。劇中劇になっていてあぜんとしたのを覚えています。いつになったら『Wの悲劇』が始まるんだろうって。 あの映画は、夏樹さんの『Wの悲劇』を劇中劇にして閉じこめ、本編はアーウィン・ショーの短編そのままではないかと物議をかもしましたが、その後、どうなったかはよく知りません。でも、ショーの短編そっくりだったことはたしかです。わたしは読んでいたので、すぐに気づきました。(ですから、原作者の名前はアーウィン・ショーにするべきでしょう) ずっと夏樹さんが、あのような改変をお認めになっていたのかどうか気になっていましたが、映画ができるまでご存じではなかったのですね! ひどいことです。 いくら映画がよくできていても、原作者をないがしろにしています。いや、莫迦にしていますね。 どんな企画でも受けて、自分の撮りたい映画にすると、あの監督(名前ど忘れ)は、当時いってたような気がしますが、あまりに自分勝手。他者が創作したものに対しての敬意がないのですね。創作者の風上にもおけません。 なぜ、このようにすると前もって夏樹さんにいわなかったのか……。 撮って公開してしまえばこっちのもんだと思ったのでしょうか。 当時も腹が立ってましたが、また腹が立ってきました。 ……そうだ、たしかサワイシンイチロウって名前だ! 脚本も書いてるし。(いま調べたら、荒井晴彦も参加している。尊敬していたから、ちょいとショック) 夏樹さんは、放映中のテレビ作品については「今のドラマでは、主人公が2人になっていますが、犯罪そのものは原作通りなのでうれしく見ています。」と書かれています。 よかったです♪
by ashikawa_junichi
| 2012-05-31 00:36
| 映画・演劇
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Comments(9)
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植草昌実
at 2012-05-31 09:15
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原作から逸脱することも手法のうちでしょうが、原作者の許諾を得てからの話ですね。大きく逸脱するなら「原案」と表示すべきでしょう。
小説の映像化は実現するまでが難しいですよね。いろいろな作品例を思い出して、考えこんでしまいました。
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足立区のおじさん
at 2012-05-31 09:31
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僕もその記事を読みました。原作者には脚本を見せて「これでいいか」と確認を取るのが普通なので……。「すべてお任せします」と制作者を全面的に信頼していたら、ああいう結果になってしまったと言うことかもしれません。
僕はいまだにアーウィン・ショーのその短編を読んでいないので、脚色についてはナニも言えなせん。ただ、脚本を書いた荒井晴彦は、自身の作品としては会心の出来であるというふうに朝日の夕刊で語っていましたが。僕も、あの映画には感銘を受けました。その後で、アーウィン・ショーの盗作疑惑を知って……。 夏樹さんとしては、自分の作品がああいうカタチにされてしまったのは腹が立っただろうと思います。劇中劇の扱いですもんね。僕も夏樹さんの立場だったら激怒して、公開時に問題にするだろうと思います。でも……映画ファンとしては、とても好きな作品なんですよね……。だから、盗作問題とか、いろいろあるのは、とても気持ちとしては微妙です。全否定出来なくて。主題歌も好きだし……。
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足立区のおじさん
at 2012-05-31 09:38
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追伸です。
市川崑は、谷崎潤一郎の「鍵」を大胆に脚色して、ブラック・コメディにしてしまいました。金田一シリーズでも犯人を換えてしまったこともありました。他にも「大胆な脚色」はあったと思います。 映画を脚色する場合、かなり大きな改変がなされる場合があって、原作者とトラブルになることがあります。キューブリックの映画「シャイニング」も、原作者キングが怒りましたよね。 映画「Wの悲劇」の場合は、他の作品の盗作という要素も入るので、問題はいっそう複雑だと思いますが……。 映画と小説はメディアの機能としては全く別物なので、それなりの脚色は必要だと思いますが……。 しかし、ご指摘の通り、原作に対する敬意があるかないか、というのはとても大きな問題ですよね。原作のファンからも絶大な支持のある映画は、原作への敬意と愛情が籠っていますから。
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ashikawa_junichi at 2012-05-31 14:31
>植草昌実さん
まったく原作に忠実にすることはないと思いますし、犯人を変えたというのは、ミステリーの場合はよくありますよね。たとえば『そして誰もいなくなった』など。 さらに、そのままでは映画化しにくい小説もあって、アプローチを変えることによって成功した映画もありますよね。たとえば『リトルロマンス』なんか。(これは異論あるかなあ……わたしは大好きな小説および映画なんです)
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ashikawa_junichi at 2012-05-31 14:59
>足立区のおじさん
公開当時は、原作をないがしろにしたことより、盗作疑惑のほうが騒がれましたよね。けっきょく訴訟にはいたらず、訳者の常磐新平さんが折れたような印象なんですが。(詳しくは知りません) 脚本家は原作を脚色するわけですから、大胆な改変や、悲劇を喜劇にしてしまう(その逆も)なんてことは、よくあると思います。当然、それを面白くないと思う原作者はいるでしょうが、映画化を許諾した段階で、ある程度は諦めなくてはいけないのだと思います。そして、映画は独立した作品として評価されるべきですよね。 ただ『Wの悲劇』の場合、劇中劇にしてしまうというのは、いくらなんでも失礼だろうと……。元の話はいじってないんですよね。劇中劇として忠実に作ってます。でも、ここが重要なんですが『Wの悲劇』を原作にする必要がないのですよ。 いや、とにもかくにも映画を撮りたい監督としては『Wの悲劇』の映画化の企画に乗るしかなかったのでしょうか……そのように思えます。 つまり、原作者をないがしろにして、出資する会社を騙し、愛読者を失望させ、作りたい映画を作ったわけです。ある意味、あっぱれな監督です。エゴのかたまりですが。
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足立区のおじさん
at 2012-05-31 15:19
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角川から「Wの悲劇」の映画化の話が来た。原作を読んだが、どうも乗り気になれない。でも、仕事は欲しい。で、ウルトラCを考えた。劇団の話にして、劇中劇にしてしまえばいい!
そう考えたんじゃないかと。その時点で、原作への敬意とか愛情はないわけで。それは映画を観れば判りますよね。劇中劇の部分は蜷川幸雄を呼んで演出させたりしていましたが、劇中劇には変わりありません。 角川映画や配給の東映を騙すことは出来ません。はっきり言えば、みんなグルになって夏樹さんを騙したんです。 というか、夏樹さんが原作者として厳しい態度をとれば、ああいうカタチでの脚色はなかったんじゃないかと思うのです。雇われた監督は映画会社を騙せません。騙すなら、プロデューサー兼任で自分が金を集めてきて、じゃないと。
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ashikawa_junichi at 2012-05-31 15:35
>足立区のおじさん
そういえばそうですよね。プロデューサーがいるのだから、どんな映画を撮っているのか、いや、その前の脚本段階からチェックを受けているわけですもんね。 そうか……みんなグルだったのか!?(°ο°;) 夏樹さんが当時お怒りになったという報道はなかったので、あぜんとしたまま、しかたないと諦めて黙っていらしたのだと思います。
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足立区のおじさん
at 2012-05-31 15:40
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あの頃の角川春樹は、おそらく、ワンマンだったんじゃないかと思います。で、劇中劇のアイディアを盛り込んだ脚色案を聞いてゴーサインを出し、角川社長自ら、夏樹さんを説得したんじゃないかと思うんです。試写まで内容を知らないとは考えにくいし……。もしくは、角川さんに完全に任せっきりにしてノータッチだったと。まさか映画のタイトルにもなっている原作が添え物扱いされているとは夢にも思ってなかったから、という、このどちらかが真相のような気がします。
もし仮に、小生の作品に映画化の話が来たら、もうべったりと張り付いて口を出しまくります。監督させろと言い出すかもしれません。ま、監督なんかしたら1年半くらいかかり切りになるので、生活出来なくなりますが……。
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ashikawa_junichi at 2012-05-31 16:03
>足立区のおじさん
エッセイによると、夏樹さんは映画を見るまで(試写室なのか映画館なのか書いてませんが)劇中劇になっていることを知らなかったようですね。任せっきりにしていたのでしょう。 わたしの作品に、仮に……万が一映画化の話がきたら、脚本くらいはチェックしようと思います。
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