『神州纐纈城』と『モデラート・カンタービレ』

 いまから30年以上前でしょうか。ぼくが漫画雑誌の編集部にいたころのことです。副編集長をされていたT.O.さんと話していたところ、
「いままで読んだ最高の長編小説は『神州纐纈城』だ。あれを読んで、もう長編小説は読む必要がないと思った。短編は『モデラート・カンタービレ』だね」
 と、いうのです。
 それが心に残り、すぐに河出文庫の『モデラート・カンタービレ』(マルグリット・デュラス)を、そして、ずいぶんあとになってからですが、講談社の大衆文学館で出た『神州纐纈城』(国枝史郎)を購入しました。
 長いあいだ、未読のまま本棚で埃をかぶっていましたが、先日、思い立ってこの2作品を読んだのです。

 どちらも面白かったです。
『神州纐纈城』は、ぐいぐいと引きこまれ、まさに巻を措くあたわずです。伝奇小説の醍醐味を堪能させてくれました。話はどんどん広がって収拾がつかなくなってしまいますから、未完なのはしかたありませんね。
 末國義己さんが解説を書かれていて、これも実に読みごたえがありました。
『モデラート・カンタービレ』は、ぴりぴりする緊迫感と官能を漂わせている傑作でした。表紙に写っているジャンヌ・モローとベルモンドの映画も観たくなってきました。ベルモンドファンのわたしが未見なのは、悔しいです。

 この2つの小説ですが、これ以上はもう小説を読む必要がないほどの超超超大傑作かというと……この世に、そんなすごい小説など存在するのでしょうか……。
 いや、T.O.さんは、それほど青年時代に、この2作に衝撃を受けたというわけでしょう。それを大袈裟に表現したのです。
 T.O.さんは、すでに亡くなっていますが、わたしは、たまにこのことを思い出します。

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by ashikawa_junichi | 2016-12-17 16:47 | 小説・本・仕事 | Comments(0)
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