思い込みによる勝手な期待

 安達Oさんが、秘湯に行かれたようですが、秘湯の温泉宿はこうあるべきだという思い込みの弊害を書いておられました。勝手に鄙びた宿を予想して、そうではなく快適な現代的旅館があるとガッカリするのは、宿にとっては立つ瀬がないだろうという趣旨です。
 騙したわけではないのに、勝手に「思っていたのと違う!」と不満を言われても困りますもんね。
 で、思い出したのです。昔の呆れたことを。

 まず、20代の初めのこと。同行したのは、中学時代からの友人で、宿も決めず、ユースホステルや野宿をしようという計画だったのですが、京都駅から出た瞬間、友人が「なんだよ、これは!」と怒りの表情になり、すぐに駅に戻ると東京に帰ってしまったことです。
 京都駅の前に、すぐにお寺や祇園などの古い町並みが広がっていると思ったようですよ。呆れ果ててしまいましたヽ(´・`)ノ

 もうひとつ。これも中学時代の別の友人なのですが、時期はやはり20代の初め。一緒にリバイバル上映の『街の灯』を見に行ったときのことです。監督主演はチャーリー・チャップリン、笑いの中に涙ありの日本人受けのする名作ですよね。
 見終わったあと、その友人が怒っているのです。
「なんだよ、ぜんぜん笑えねえじゃねえかよ!」
 と。
 よくよく聞いてみると、友人はチャップリンの『モダンタイムス』があまりに面白く、同じような映画が見られるぞと期待していたというのです。
 いまほど情報が蔓延していない時代ではありましたが『街の灯』がどのような映画なのか、チャップリンというのは、初期はドタバタだったけど、以降はしっとりとした情感のあるコメディが主だったこと、だからこそ日本で人気があったことなど、知っていて当然だったことでした。
 しかも『街の灯』のポスターは、ドタバタ映画とはとても思えない恋愛映画のようなものだったのですよ。ベンチにチャンプリンと目の見えない少女が座っている、とても情緒的なものでした。
 まあ、どういう映画か知らなくてもいいですよ。でもね、見ている途中から、違うぞこれはと思うでしょう。そこで気持ちを切り換えてほしいものです。それを、こともあろうにプンプン怒っているとはどういうことでしょうね!?
 当然、僕は反論しました。かなりきつく反論したと思います。
 それから何年かして、
「お前がなぜ怒ったのか分かったよ。自分が気に入った映画をけなされたら怒るよな」
 と、その友人は言ったのです。
 違うって! 勝手な思い込みで文句を言うことについて怒ったのです。
 だけど、その友人は、いまでも分かってないようですヽ(´・`)ノ
 もう何年も会ってないですけど。

 ちなみに、僕はチャップリンよりもマルクス兄弟やキートンのスラップスティック、つまりドタバタのほうが好きですが(^o^)
by ashikawa_junichi | 2010-03-29 17:25 | 四方山話 | Comments(2)
Commented by 足立区のおじさん at 2010-03-30 13:20
人のことは笑えません。
アタシは、東京に出て来て、まず、青山に行ったんです。日本ではないような、ヨーロッパみたいな街並みがあるだろうと思って。
行ったら、当時はまだ都バスの基地があったりして、「そのへんの大通り」と変わらない光景だったので、ひどくガッカリしました。
それと、神田。てっきり本屋さんが並んでいると思ったら、本屋なんか全然なくて。神田と神保町は違うと知らなかったんです。
そういう「ステレオタイプな誤解」をネタにSFを書いたことがありますが……。
Commented by ashikawa_junichi at 2010-03-30 14:18
>足立区のおじさんさん
 そのSF、ぜひ読んでみたいです♪
 みんな、そうした勘違いというのはあると思います。(僕も例外でなく)

 ここに書いた友人たちは、二人とも異常に怒っていたので、記憶に焼きついているのです。
 しかも、ほかでいろいろトラブルがあり、一人は絶交、一人は疎遠になっています。ほかの嫌なことを思い出して、筆がきつくなったかもしれません(^ω^;)
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