『古書ミステリー倶楽部』(光文社文庫)所収の『終夜図書館』(早見裕司著)を読みました。
以前に『異形コレクション-蒐集家』におさめられた作品ですが、持っているのに未読でした。『異形コレクション』は毎月発売なので、読むのが追いついていないまま未読の作品が溜まってしまっていたのです。 この作品の早見さんの文章は、読点がまったくなく、文章が長いのです。一見して読みにくそうですが、そんなことはまったくなく、すらすらと読め、名人芸に触れた気がしました。 そして、『終夜図書館』を読んで、サリンジャーのことを連想しました。 サリンジャーは、作品を発表することをやめて片田舎にひっこんだあとも、毎日小説を書き続けていたそうです。発表するつもりはなく、ただ自分のためにです。 批評家の言葉も耳に入ることはなく、読者の反響もまったくないので、心静かで充実した日々を送ることができたそうです。 死後、何作か発表してもよいという遺言があったそうで、いずれ読むことが出来るでしょう。 さて、なぜ『終夜図書館』を読んで、このサリンジャーのことを連想したかは書きません。わけをお知りになりたかったら、ぜひ『古書ミステリー倶楽部』を購読してください。 ところで、早見裕司さんは、作家生活25周年ということで心機一転、早見慎司に改名されたそうです。 自分のためだけに小説が書けるものなのかと自問してみました。職業小説家として娯楽小説を書いているので、そんなことは考えたこともありません。ですから、頭の中は???だけです。 自分のためだけに『非現実の王国で』という長い長い物語を書き続けたヘンリー・J・ダーガーという人がいましたね。救貧院で、死後は部屋の中のすべてを破棄してくれといっていたようですが、世話をした人が作品を読んで、ダーガーを裏切ったおかげで(作品を残したので)、世に知られることになりました。 この長い長い物語は、その一端に触れただけで妙な魅力があります。物語を作る行為というのは、奥が深いものなんですねえ……。
by ashikawa_junichi
| 2013-10-22 22:27
| 小説・本・仕事
|
Comments(0)
|
最新のコメント
フォロー中のブログ
ともだちサイト&ブログ
歴史人公式HP
雨あがり写真館 遊戯三昧(えとう乱星) 新・日記代わりの随想(朝松健) ダー松の明日はこっちだ! 矢島誠の「言の葉ランド」 聖感日記 聖 龍人の日々ガックリ日記 安達瑶の片割れ・安達Oの自分語り 千野隆司の「時代小説の向こう側」 オダマンガ.コム(おだ辰夫) オダンディズム 暗中模索 熊野小春ですけど なにか? おみや細見(とやまみーやのホームページ) 早見 俊のボン人日記 ちばちゃん的、こころ! 酔いと読書と好き勝手 暢気倉庫通信 主水血笑録 blog 荷風! 川崎大師 飴の老舗 評判堂 新つれづれ草 YAMATO CHIPS(写真家高田千鶴さんのHP) yamato days(愛犬やまとの親ばか日記) チョコちょこダックス チョコちょこダックスのチョコちょこ生活 チョコちょこカンパニー しあわせの風景 榮吾録〔改訂増補版〕(岩水榮吾) f*lowlish(哉ヰ涼) 猫御殿掲示板 ダーサン 猫絵・ギャラリー 別館1 明日へ ライフログ
カテゴリ
禁煙 健康 飲食 食べ物 小説・本・仕事 四方山話 映画・演劇 旅行・行楽 音楽・アート 漫画 アニメ スポーツ ドラマ 買い物 ペット 人生 日常 事件・事故・天災 奇怪な話 動物 雑誌 病気 その他 絵画・イラスト ネット いただきもの テレビ 以前の記事
検索
ブログパーツ
ファン
記事ランキング
ブログジャンル
画像一覧
|
ファン申請 |
||