急に『どくだみ荘』を読みたくなって

 漫画家ダー松さんとの会話で、福谷たかし氏の名前が出てきて、福谷氏の近況を知りたくなり、さらに週刊漫画Timesで大人気を博した『独身アパート どくだみ荘』を読み返してみたくなりました。
 調べてみたら、福谷氏は2000年に48歳という若さで亡くなっていたのですね。そういえば、そんなニュースを読んだ覚えが……忘れていました(-o-;)
 福谷氏と面識はありません。ただ『週刊漫画ゴラク』編集者時代に3本ほど彼の作品がゴラクに載り、惹かれるものがあったので、担当していた先輩に、つぎの原稿は入ってますか?と訊いたことを覚えてます。
 すると、
「汚ない場面が多すぎるから、書き直してくれといったんだよ」
 という返事が。いや、このことは実は忘れていました。それよりも、週刊漫画Timesで『どくだみ荘』が連載になったときに、彼はゴラクに原稿を持ってこなかったんですか?と訊いたのです。
「これから原稿を持っていきますがよいですかと電話があったから待っていたけど、こなかったんだよな」
 この応えのほうを覚えてました。
 なぜ、世話になっているゴラクにではなく週漫に!?と疑問に思っていたのですが、今回気になって『レジェンドどくだみ荘伝説』を購入し、巻末の年譜を読んで氷解しました!
 そして、さきほどの汚い場面が多すぎるから返したという言葉を思いだしたのですよ。
 そうかあ、先輩は汚ないのがいやだったんですねえ。
 ゴラクと漫画サンデーに断られ、そのあとに週漫に……という順番で持ち込みをしたそうです。ひょっとすると、電話したのにこなかったのは、少し書き直したものを、もう一度ゴラクにと思っていたところを、どうせ駄目だからとやめたのかもしれません。
 せっかくゴラクでデビューしたのに、週漫に持っていかれて悔しいと思っていたのですが、断っていたんだから仕方ありません。週漫の編集者を褒めるべきですね。福谷氏は、ここで駄目ならその原稿を捨てるつもりだったそうです。

 ゴラクに載った3本は『どくだみ荘』とはまったく違った内向的な青春漫画でした。ガロ的というかCOM的というか、地味だけど光るものがありました。
 当時、わたしは永島慎二氏の担当でしたが、氏に読んでもらうと興味を示し、
「また掲載されたら読みたいですね」
 と、おっしゃっていたのです。この言葉、福谷氏は知らないままだったでしょう。それとも、一時期同じ阿佐ヶ谷に住んでいたので、どこかで二人は会ったことがあるのでしょうか。お二人とも鬼籍に入っているので、訊けないのが残念です。(周囲にいたどなたかが、ご存じかもしれませんが)

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by ashikawa_junichi | 2017-06-19 18:40 | 漫画 | Comments(0)
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