浅川マキのような女性

 以前、出版社時代の後輩の結婚パーティーに出席したときですが、彼が大学時代に所属していた映画サークルの先輩や後輩が祝いにきていて、うらやましかったです。
 ぼくは長く在籍したサークルがなかったので、先輩も後輩もいないのですよ。これには悔いが残っています。
 劇団は生活全般が活動に浸食されてしまうとおそれて入らず、そのかわりに文学研究会なるものに入りました。文学よりも映画ばかり観ていたので、映画サークルも考えたのですが、どこも革マルや中核に牛耳られているという噂があって、断念したのです。もっと探せばよかったなと、いま思うと残念な気分です。
 ともかく、文学研究会です。なんだかジメッとした雰囲気でしたが、馴染もうと努力するつもりでした。書いた作品を合評会に出して、みんなで論じ合うそうなのですが、作品を書く前のこと、幹事長から電話があり、
「今度、集まりがあって、運営面でのことで話し合いたいのですが」
 と、誘われたのです。入ったばかりで見当がつきません。断る理由もないので、いちおう許諾しました。すると、すぐに別の先輩から電話があって、
「反幹事長という立場で集まりがあるのですが……」
 なにやら、内紛に巻きこまれそうだとわかり、誘いを断り、幹事長にもこちらから電話して参加をとりやめました。
「政治的なことにかかわりたくないということですね」
 というので、なんとも大仰なと思ったものです。
 それをきっかけに、文学研究会から足が遠のき、やがて辞めてしまいました。
 のちに、サークル外の同級生が、どこから聞いたのか事情を知っていて、
「運営のしかたとかでもめてたのではなくて、幹事長と反幹事長の実力者が、ひとりの女を取り合っていたようだよ」
 というのです。
 そういえば、美人ではないけれど、いつも黒ずくめで、ミステリアスな雰囲気の女性がいたことを思いだしました。男心がざわつくというか、彼女の魅力にとらわれるひとがいても不思議ではありません。風体をいうと、同級生は、おそらくその女性だろうと。
 浅川マキっぽい人でした。けっきょく、どっちが彼女をゲットしたのかは知らずじまいです。
 そういえば、最初に書いた出版社時代の後輩ですが、文芸坐での浅川マキのライブを手伝っていました。(いま思いだしました)
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by ashikawa_junichi | 2018-05-31 18:22 | 人生 | Comments(0)
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